ルーツを紡ぐ 七五三に思うこと
季節は七五三の頃
健やかな成長のお祝いと祓いの行事が今年もめぐって参りました。
お詣りの子供たちの中にポックリ下駄を見ると、顔がほころびます。
下駄は我が家にとても縁があります。
実家は材木を扱い、特に桐には思い入れが深いです。家紋も桐に縁のあるものです(家紋のお話もいつかしたいです)それぞれの家にご先祖の物語がありますが、ルーツをたどるということは面白く、また思い悩むときには、きっと勇気を与えてくれるものとなります。
しつらい、の旧字、禮にはそんな意味も込められています。
先祖は関西で材木商を営んでおり、祖父はその中でも特に桐と杉が好きだったと聞いています。そんな祖父でしたので、祖父の代には北海道桐から沖縄の屋久杉までを所有し、各地に山林と工場がありました。桐下駄、衣装箪笥、琴、塗、職人さんが働き、歌舞伎座や舞台の道具も作っていました。良い時もそうでない時も材木とともに過ごしました。桐が好きで、大勢の使用人を束ね、慕われその御恩を多く受けた人だったと聞いたものです。その祖父に今でも皆が守られているように感じます。寡黙で怖い祖父というのが孫たちの印象。と、祖父についての物語を語る、祖父についての思い出であり体感です。
設える調度品として桐の製品や漆をを使うとき、しっくりと馴染むのは体感があるからです。
伝統工芸や文化への興味はつきません。
日本の伝統は、すべてが繰り返し繰り返し、受け継がれてきたものです。循環のなかですべてが繰り返されます。
靴などない時代の普段の履物は下駄でした。材質も色々ありますが、やはり桐は特に良しとされています。柾目の細やかさ、きらきら光るつややかさは断トツです。
歯の短い下駄、冬は歯の高い雪下駄、歌舞伎でよく見る高下駄、ちょっとお澄ましのポックリ下駄
、鼻緒でお洒落も楽しみます。
足の裏が強くなり、体感もしっかり、吸収性もあり水虫なんてものもないでしょう。親指と人差し指の間に鼻緒を通すことで運動にもなる。今は中々履きませんので、最初は鼻緒での肌ずれに気をつけなくてはなりません。下駄屋の孫の今年の私がそうでした。
昔の女性の唯一贅沢な持ち物は箪笥、または衣装箱だったことでしょう。
着物もそうですが限られます。あとは家族の為のもの。親は娘の結婚式に桐の箪笥を持たせたかったのです。桐の成長は人の成長と育つ時間がにています、嫁入りの時に成長した桐から箪笥を作り花嫁道具としました。桐は吸収性に富み、物が腐らない、痛まない、着物に虫が付かない。火事でも燃えにくいと言われています。ですから、悪い虫がつかないように、元気でおりますようにという親心も含まれています。家族を作り達者でくらすようにとの思いが込められていたのかと、今更ながら私も耳に痛い発見です。これから切磋琢磨しましょう。
先生のお宅には100年はたつのではないでしょうか。立派な白木の桐箪笥がありました。
桐というのは表面を削るときれいな白い面がでます、何度も手直しが出来るのです。
七五三や重陽の時季には、桐の小箪笥を使った設え、先祖、祖父、職人の皆さまの物語を紡ぎます。
桐の木は、神の使いの鳳凰が住む木という神話にちなみ、桐の小箪笥に五色の紐を結んでいます。鳳凰は陰陽五行、この世は五行で出来ている、その姿を五色の色で表した神話の鳥です。ご加護を祈ります。
小箪笥の中には、家族の思い出の品を入れますが、めんこだったり髪飾りだったり、古い写真だったり
引き出しを開けては、笑い声が起こります(笑)